6 hours alone

 
「……んあ……?」
 
 すぽっと、耳からなにかが抜け落ちた感覚に、彰人は沈みかけていた意識をふっと覚醒させた。随分と眠っていたらしい。ぼんやりとした視界は最後の記憶よりずっと暗く不明瞭で、もうすっかり陽が暮れていたことに気がつく。
 ぱちぱちと瞬きをしながら耳の違和感がなにかと視線を彷徨わせると、唯一感じることのできる光源を遮るようにベッドへと腰掛けた相棒が目に入った。
 
「冬弥」
「……起こしてしまったな」
 
 彰人と視線を合わせるなり、冬弥は「すまない」と言って視線を落とした。ついつられて同じように視線を落とすと、手には有線のイヤホンが片方だけ握られている。どうやら彰人の耳に差さっていたイヤホンを抜いたようで、それで起こされたらしい。
 違和感の正体に納得して、ふと視線を感じ見上げると、面白いくらいに弱りきった顔。笑顔と、それから熱に浮かされた顔の次くらいに見慣れてしまった表情に、くつくつと笑って首を振った。
 
「いいよ、ぼーっとしてただけだしな。おかえり」
「そうか……ただいま。調子はどうだ?顔色はよくなっているみたいだが……」
「朝から悪くなかったっての。今日は一応安静に……って冬弥、お前が言ったんだろ」
「それはそうなんだが彰人はすぐ無理をするから……大丈夫ならよかった」
 
 探るような視線に笑って返せば、空元気ではないと分かったのだろう、冬弥の目つきに安堵の色がよみがえる。その変わり様があからさますぎて少し気恥ずかしい。暇な時間に耐えかねて眠っていただけでこうも心配されるのだから。
 心配をかけて悪かったと思う。同時に、大事に想われているのが嬉しくて無性に冬弥のことを抱きしめたくなった。
 
 
 
 どこからか風邪を貰ってきてしまい、彰人は珍しく体調を崩し二日ほど寝込んでいた。
 少しの熱、咳と鼻水。あとは頭痛。不幸中の幸いなのは重い症状ではなかったことだが、辛いことに変わりはない。
 屋根を共にする冬弥はゴホゴホずびずびと典型的な風邪の症状と戦う彰人よりつらそうな顔で、せっせと彰人の看病をしていた。慣れないなりに作ってくれた大量のネギが入ったうどんも、水気の少ないおかゆも美味しい。不安そうな顔に「うまい」と伝えた瞬間のほっと息をつく姿を見れば、ただの風邪に大袈裟だとは言えない。
 滅多に風邪を引かないから世話を焼かれるのは新鮮だった。だから、忙しなく動く冬弥を横目にニヤける顔を抑えることもできず随分と甘えてしまった。冬弥も頼られて嬉しいのか、つらさと嬉しさを交互に滲ませた顔を披露して、彰人を悶え苦しめる。
 甲斐甲斐しく世話を焼かれるのは意外に悪くない。が、よくもなかった。なにより歌えない。練習には参加できないし、一緒に住む冬弥に迷惑をかけることになる。BAD DOGSとして出る予定だったイベントが近く控えており、決して休める時期ではなかった。
 迷惑をかけることも気になるが、久しぶりに二人だけで表に出るというときに限ってなのが気に入らない。不調は自己管理ができていないせいだが、数日とはいえ、歌えないのはつまらない。
 体調管理は更に徹底しようと、主催へと連絡を入れひとりイベントへと向かう冬弥を見送りながら思ったのだった。
 
 
 
「とーや」
 
 分かってくんねえかなと、両手を前に伸ばしじっと顔を見つめた。少しの間視線を絡めて、冬弥はなにを思ったのだろう。きょとんと首を傾げたあと、微笑みを口角に浮かべ伸ばした手に指を絡めた冬弥に、これは分かってねえなと、彰人は恋人の察しの悪さに思わず「ははっ」と渇いた笑い声を上げてしまった。
 
「冬弥、起こせよ」
「ん?ああ……わっ、彰人?」
 
 不思議そうな顔をした冬弥に寝すぎて気怠い体を引っ張ってもらい、そのまま胸へとダイブした。驚く声を上げながらもしっかりと彰人を受けとめた体に収まって頬を寄せる。
 ライブハウスで汗を流してきたのか、冬弥がよく使うボディソープのかおりがふんわりと鼻腔を擽った。冬弥本来の体臭と混じっても気にならない、いいにおいだ。胸いっぱいに吸いこみたくなるようなすっきりと爽快感のあるシトラスの香りに、ぼんやりとしたままだった意識もはっきりとしてくる。
 すりすりと鼻を押しつけ香りに浸っていると、子どもをあやすように後頭部を撫でられ、気持ちよさに自然と頬が緩んだ。ここ数日の彰人の行動のせいで、甘えていると思わせてしまったようだ。
 まあ、間違いではないのだが。
 
「甘えてくる彰人は可愛いな」
「そんなこと言うのお前だけだっての」
「俺以外にいてもらっては困る」
「……はは」
 
 手に少しだけ力がこもる。見上げれば、むっと唇を尖らせた顔が目の前にあった。こんな可愛らしい顔が恋人の怒った顔らしい。
 彰人は突然見せられた独占欲にニヤける顔を隠しもせず、頬を包みこんで引きよせた。治っているとは思うが自己判断だから、口の横にちゅっ、と可愛らしい音を立ててみる。「お前以外いねえよ」なんて実際そうだとしても口にするのはクサくて、代わりとばかりに頬をむにむにしてみた。見慣れた顔が形を変える。変な顔だ。それでも、彰人の頭に浮かぶのは「可愛い」の一言である。
 
「お前の方が可愛いけどな」
「彰人は俺が可愛いと言うとすぐそう返すな……別に可愛くはない……と思う。彰人の方が……」
「はあ?……まあ自分じゃ分かんねえか」
 
 ほど良い肉つきを楽しむ。頬の肉は薄い方だが十分にもちもちしていて、正月に食べた餅を思い出した。可愛いと食べたくなるのは本当らしい。
 食べたいとは流石に言えないため、丹念に揉みこむだけに留めた。「アンタたちってほんと、バカップルみたい」なんて腹立つ杏の声が聞こえてきた気がしたが無視して追い払う。
 
「それより……なにを聞いていたんだ?イヤホン、音がしない」
「あー……イヤホン抜けて音楽止まったんだろ……ほら」
 
 彰人にされるがまま顔を揺らしていた冬弥が片手を上げた。薄暗がりの中、白い線が宙にゆらゆらと揺れている。
 そういえば差したままだった。忘れかけていた存在を思い出して、粗雑にベッドを探りお目当てのものを見つけ出す。イヤホンの根本が半分ほど抜けたスマホを掲げて見せると冬弥はなるほどと頷いた。
 なにを聞いていただろう。じっと記憶を辿るまでもなく、すぐに思い出した。思い出すきっかけは目の前にある。
 冬弥にイヤホンを耳に差すようにジェスチャーして、目の前でかちっと差しこんだ。彰人の耳に歌が届くと同時に、イヤホンを耳にはめた冬弥の体がぴくりと不自然に震える。
 
「どうよ」
「俺の歌……?」
「そ、しかも高校の時のな」
「……懐かしいな……少し、というかかなり、恥ずかしいが」
 
 頭から流れ始めた若々しい声の正体に冬弥はすぐに気がつくだろう。その予感は見事に的中。冬弥は居心地悪そうに頬を赤らめた。昔に比べて豊かになったとはいえデフォルトが無表情だから、やはりこういう顔は可愛いと思ってしまう。
 互いに可愛いと言い合う地獄のような図は遠慮したいので胸に留め、代わりに手を伸ばした。さらさらの髪に指を通して丸い頭を撫でる。――互いに頭を撫で合っている状況には一旦、目を瞑った。
 
「ここの冬弥すげえ好き」
 
 粗暴な印象を受けるのにどこか丁寧。そんな特徴ある歌詞を見た瞬間、これを冬弥が歌えば面白いだろうなと歌ってもらったものだ。
 電子の冬弥が声高に「いきやがれ」なんてらしくもない強い言葉を歌い上げる。この声の調子だけで、冬弥がするであろう顔が目に浮かんでたまらない気持ちになった。
 
「ギャップあるよな。お前と、こういう曲。すげえいい」
「そうか……」
「ぶはっ」
 
 隣から苦々しい声が聞こえてきて彰人は思わず噴き出した。気に食わないと言わんばかりの顔がじっとスマホを凝視している。
 
「なんつー顔してんだ。可愛いだろ?」
「可愛いかどうかは分からないが……ここ、拙いな……音程を正確に取ろうとしてブレている」
「拙いってそりゃあ今と比べればな……このときのお前の全力なんだから、これはこれでいいんだよ」
「しかし……できれば、今の俺の歌を聞いてほしい」
「お、なんかドラマが始まりそうなセリフだな」
「彰人、笑わないでくれ」
「わりぃって……たまたま昔の曲になってただけで今のも聞いてるから、さ……ぐえ」
 
 むっとした顔に笑いが止まらない。謝りながらも体を揺らしていると、冬弥の両腕がぎゅうっと全身を締め上げた。数日動かしていない体がみしみしと悲鳴を上げる。
 
「いってぇ!」
「……彰人が笑うからだ」
 
 ばしばしと背中を叩く。しぶしぶながら力を緩めた腕から抜け出して息を整え、拗ねた顔を見やった。頬がほんのりと赤いような。
 
「つーかお前……自分でもちょっと思っただろ」
「……なんのことだか」
「ふははっ!」
 
 顔を背けた冬弥に手を伸ばしてまた頬をむにむにしてみた。頬が熱を持っている。照れている、と確信してしまった。
 内心穏やかでない。「あー可愛い」と言いたくなるのをぐっと堪えて、脳内に現れた杏に「バカップルで結構。可愛い冬弥が悪い」と告げた。ジト目の杏の横でこはねが笑っている。すべて妄想なのだが。
 馬鹿にしたわけではない。しかし笑ったことは事実なので「悪かった」と口にすると驚いた顔が「素直」と呟いた。自覚はあるのでボロが出る前に別の曲を再生させる。
 
「こんなのもあるのか……しかし本当に懐かしいな。まだ持っていたのか」
「あー……まあ冬弥だけじゃねえけどな。オレのも、杏とこはねのも入ってる。冬弥以外はたまに聞くぐらいだが」
「俺のは違うのか?」
「お前のは別でプレイリスト作って、それ聞いてる……って話したことないっけ」
「え……そう、なのか?知らなかった」
 
 目をぱちくりさせた冬弥に彰人の方が驚いた。このルーティンはいつから始めたのだろう。古い記憶を思い返しても目的のものに辿り着けない代わりに、確かに、この話を冬弥にしたことがないことを思い出した。
 秘密にしていたわけではないが改めて聞かれると少し気恥ずかしい。別に隠すことでもないかと口を開いたが、声は少し落とした。
 
「お前がソロで歌うってときはさ……お前の歌聞いて、相棒のお前を堪能してる」
「堪能……」
「隣で歌えねえ代わりに、な。どっかで歌ってる相棒を想像してる」
 
 特にするつもりのなかった話題を出したのは、今日ふたりで歌えなかったからだろうか。そんなつもりはなかったが、よほど堪えているらしい。
 秘めゴトを告白するように耳元で囁いて、彰人は冬弥の様子を伺った。
 
「……」
「いや、なんか言ってくんねえと……って、はは」
 
 抱きついた体温がみるみると上昇していくのを感じて顔を見れば、あからさまに動揺した冬弥が彰人を見つめていた。彰人と視線が合うや否や恥ずかしそうに目を伏せる。その様子に、抑えこんだ「可愛い」がまた顔を出した。
 
「あー……そんで、帰ってきた恋人の冬弥を、っと」
「あき……っ、わっ!?」
「こうやって堪能すんのが楽しいんだよな」
 
 冬弥をベッドの上へと押し倒して馬乗りになった。その拍子にイヤホンが耳から抜け、互いの耳に聞こえていた相棒の冬弥がいなくなる。
 可愛らしい顔が彰人を見上げ眉をひそめていた。咎めるような視線ににんまりと笑い返す。この数十分でいろいろな冬弥を見ることができ気分がよく、鼻歌でも歌いたい気分だ。
 
「突然危ないだろう……っ」
「はは……冬弥が可愛い顔すんのが悪い」
 
 こんなにも表情豊かな冬弥をきっと誰も見たことないだろう。常、厳重に蓋を閉め出てくることのないように制した独占欲が僅かに顔を出し、満足気に引っ込んだ。
 
「……彰人も可愛い」
「お前も言い返すよな。風邪引いて二日寝込んで、今度は暇で寝るしかやることなかっただらしねえ顔が可愛いってか」
「ふふ……それももちろん可愛いが」
「んなわけねえだろ」
「彰人が自分の魅力を知らないだけだ。しかし、そうだな……」
 
 冬弥はなにか言いかけ、そのまま言わずに口を閉じた。促すと急に表情を変え、その様子に、彰人は吹っ掛けたつもりがわずかにあった勝負の行方を察してしまった。
 
「今のは、俺のことが好きでたまらない、といった顔だろうか」
 
 そんな顔が可愛くて好きだ、と冬弥は軽く微笑した。

「……」
「彰人?」
「……なんでもねえ」

 指摘された表情に身に覚えがありすぎて沈黙を返す。冬弥は声色を捉えるのがうまいので、そうするしか平静を装う方法がなかった。しかし体じゅうが熱い。
 どうにかだらしない顔を見られないように首筋に埋めたが、火照った体を隠すことはできない。すぐ隣から冬弥が笑った気配がした。
 
「汗、引いたな。一昨日はすごい汗だったから……本当に、ひどくならなくてよかった」
「んっ」
「今も……少し熱いな?」
「ふ、ぅ……っ」
 
 服の下へするりと入りこんだ手が確かめるように背骨をなぞった。下から上へと往復する、凹凸を沿うねっとりとした手つきが少しいやらしくて、ぞくぞくと戦慄く背を丸める。なんともいえない感覚がさざ波のように体中に広がるのを、冬弥の耳に齧りついて誤魔化した。
 
「やらしー触り方すんな」
「そんなつもりはないが」
「はあ?……んだよ、腹立つな」
「笑われた仕返しだ」
 
 服の下から抜け出た手が囲うように背中を包み、ゆったりと往復する。服越しでも火照りを誤魔化せるとは思えず、彰人は諦めて力を抜いた。
 こんなスキンシップにその気になってしまうのも恥ずかしいが仕方がない。一緒に過ごしていたとはいえ触れ合うのは久しぶりだし、冬弥はいいにおいがするし、なにより可愛いし。
 仕方がないと割り切ってしまえば少しの恥ずかしさで済む――はずだ。
 なんとかこの状況を変えようと口を開いた。息が掛かってくすぐったいのか冬弥が身じろいで、その動きに合わせて視界が揺れる。本当にあやされているみたいだ、とは口が裂けても言えなかった。
 
「そういや大丈夫だったか?風邪、移ってねえよな」
「今のところは」
「体怠いとかも?」
「彰人が乗っていて重い」
「あぁ?……まあ、ないならいい……ライブは」
「聞かれるまでもない」
「だよな」
 
 心配はしていないが、流石相棒。
 ひとりでステージに立ち観客を沸かせる冬弥を想像するとどうにも胸が痛むが気にせず、話は終わったと口を閉じた。いつものやり取りはそこで終わらせたつもりだった。
 沈黙を破るように彰人の腹が空腹を訴え、ぐぅと鳴る。
 
「なあ、腹減ったしなんか食おうぜ。お前も食べてねえだろ」
 
 冬弥の可愛らしさが食欲を刺激したのだろう。冷蔵庫の残りを思い出しながら身を起こそうと力を込めた瞬間、なにかを言いたげに息を詰めた冬弥に気がつき、彰人は反射的に意識を向けた。
 
「だが……」
「……?」
「彰人がいないと、つまらない」
 
 愛してやまない相棒が耳元で囁いた。すぐそばにいる彰人だけに聞かせるような小さな響きに聞き逃してしまいそうになる。
 彰人に聞かれたくないような、逆に、彰人だけに教えるような、そんな躊躇いを感じた。
 
「ひとりでも歌えるが……やはり俺は彰人と歌うのが好きだ」
「……っ」
「仕方ないと分かってはいるしステージに立つ以上最大限のパフォーマンスはするが……ひとりではつまらない、と思ってしまった」
 
 呟いた途端、冬弥は腕に力を込めた。右手が項を撫で後頭部へと滑っていく。抱きしめるというよりは起きあがれないように制している。そんな強さだ。
 初めて聞く、冬弥の思い。虚を衝かれ目を見開いた彰人は、冬弥にぺたりと覆いかぶさっていた体を起こそうとした。しかし、しっかりと捕らえられ動けない。
 一体どんな顔をしているのだろう。これでは顔を見ないでくれと言っているようなものだ。
 そんなことをされれば俄然興味が湧いてきたが、彰人を起き上がらせる気のない強さに仕方がないと諦めた。至近距離の、真っ赤に染まった耳でも十分、彰人の心は満たされてしまう。
 
「冬弥……」
「……子どもみたい、だったな。忘れてくれ」
 
 そう言い残し、冬弥は起き上がった。なにも聞く気はないとばかりに口を開きかけた彰人を無視し、体をごろんと転がすと、素早く身なりを整え「ご飯を作ってくる」とベッドから離れる。こちらを振り返ることなく寝室を出て行った横顔はリビングの光に照らされ、しっかりと彰人の目に焼きついた。ぎゅっと握りしめた拳で、誰に見られるわけでもない口元を隠す。
 
「つまらない、ね……あー、くっそ……」
 
 そうだ、確かにひとりはつまらない。冬弥もそう感じているのか。あの冬弥が。
 歌えないのがつまらないのではない。冬弥と歌えないのが、彰人はつまらないのだ。そんなあたりまえのことに改めて気がついた。
 
「……顔あっか……はぁ、かわい……あっちぃ……熱ぶり返したか……?冬弥のせいだな」
 
 はは、と気の抜けた笑い声がひとりきりの部屋に響く。言いようのない高ぶりにじたばたと転げまわりそうになるのをどうにか堪えたが堪えきれず、たまらず握りしめた拳に爪が食いこんで痛い。
 今すぐ、あんなことを言い放つ可愛らしい唇にむしゃぶりついてしまいたかった。
 
「はぁ……体調管理しっかりしねえとな……」
 
 米を研ぐ音が聞こえる。ふと、画面がついたままのスマホが目に留まり、彰人は拾い上げるとイヤホンを耳にはめた。画面を操作すると、専用のプレイリストに冬弥が歌う曲だけがずらりと並んで笑ってしまう。どれだけ特別なんだよと思わずにはいられない。
 彰人は火照った体を持て余しながら、ベッドへ深く沈み目を閉じた。イヤホンから漏れる愛しい相棒を堪能し、小さく声を合わせる。
 それはご飯ができたと、リビングから自分を呼ぶ声が聞こえるまで続いた。

テキストのコピーはできません。